戻る
一秒でも長く一緒に

いつものように大倶利伽羅が主の元を訪ねると、縁側の軒下に置かれた竹飾りのそばにその姿があり、短冊をくくりつけながら七夕の童謡を口ずさんでいた。

それが置かれることになったのは、昼に鶴丸国永が今剣、秋田藤四郎と共に領域にある竹林から竹を切り出して七夕をしようと突然言い出したことによるものだった。
竹は執務室前の軒下に置かれ、短刀の男士たちが中心になって折り紙で作られた色とりどりの飾り物が飾りつけられてすっかり装いを変え、七夕当日である明日を待つばかりとなっていた。

大倶利伽羅はふと視線を空に向けた。
本丸の天候は現世の影響を受けないので基本的に荒れることはないが、雨は降る。
前日である今夜はよく晴れたが肝心の明日はどうなのだろうかと考えたところで、ふいに風が吹いて竹飾りを揺らした。

笹の葉同士が擦れる音や飾りが揺らめいている様子をじっと見ている主の姿を眺めていると、さすがにその視線に気づいたようでこちらを振り向く。
短く悲鳴を上げて目を丸くし、ビックリしたと胸をおさえながら息を吐き出す。
そうして、いらっしゃいとほほ笑んだ。

主がお茶を淹れている間、大倶利伽羅は低いテーブルに置かれた折り紙を一枚手に取り、しばし考えた末に鶴を折り始めた。
大広間で男士たちが主と共に飾り作りをしているのを通りがかったときに見かけて誘われたが、その時は別の当番があったので断っていた。
その後、太鼓鐘貞宗からなにか書いたらどうかと短冊を渡されたものの、他の目に触れても問題ないような願いも特に浮かばないので内番服のポケットに突っ込んでそのままにしていた。

大倶利伽羅が折った鶴の横に主が折った少し小さい鶴が並ぶ。
そうして二人でいくつも鶴を折ってそれらをつなげたものを吊るしていくなかで、大倶利伽羅の視界に先ほど主がつけていた短冊が飛び込んできた。

刀剣男士たちが元気に過ごせるようにと祈る主の字は、いつもよりも丁寧に書かれている。
力強い字、達筆な字、可愛らしい字と様々な字で書かれた短冊は刀剣男士たちがそれぞれ書いたものだろう。
それらを眺めていくうち、特に多いのが主の健康を願うものであることに気づくと大倶利伽羅はそっと口元をゆるめた。
気付かされる形なのは悔しいが、自分にもきちんと表に出せる願いはあったようだ。

ポケットをさぐって短冊を取り出し、文机の上にあったペンで書く。
彼の行動を興味深そうに見ている主の視線を感じつつ、背丈的に主が手を伸ばしても届かないだろう程度の高さに短冊を吊るした。
こういうのにはあんまり興味ないと思っていた、と意外そうな主は今しがた彼が吊り下げた場所を見上げている。
「……何を書いたか気になるか?」
後ろから耳元でささやきかければ、主は大げさに肩を揺らして恥ずかしそうに振り向き、別にとそっぽを向く。
表情には「気になる」とはっきり出ているが口に出さないのは遠慮してのことだろう。
そんな様子に彼は小さく笑うと、あんたと似たようなことだと答えながら主の手をつかんだ。

手をつないだまま、千羽鶴が加わって一層賑やかになった竹飾りを二人並んで見上げる。
明日も晴れるといいね、という主の言葉にそうだなと返しながら大倶利伽羅は握る手に力を込め、そうして抱き寄せると髪越しに額へと口づけを落とした。


戻る